春日神社の石取祭は、江戸時代の初めごろから行われたと伝えられ、現在も
国指定重要無形民俗文化財ならびにユネスコ無形文化遺産(山・鉾・屋台行事)の構成要素の1つ
として大切に受け継がれている。この桑名の伝統的行事に使用される祭車は、彫刻、金具、幕類、絵画などによって装飾され、数多くの木製部材に漆塗りが施されている。漆工技術による装飾は、本来、木部の強度を高めることを主目的とするが、明治14年の石取祭再興以降、次第に堅牢でかつ豪華なものとなり、蒔絵や象嵌の技法、夜桜塗りなどの変わり塗り技法を駆使した美術工芸的な装飾へと変化した。山本実(翠松)氏は、代々祭車塗装を手掛けてきた家系に生まれ、父である先代にその技術を学び、破損等による老朽化が危惧される祭車の継承に尽力してきた。祭車の漆工は、その構造上、建造物修理と美術品修理の両面を担う技術が求められるもので、施行にあたり幅広い技術と経験を必要とする。技術者であると同時に、茶道具を中心とする美術工芸作家である同氏は、この点において貴重な存在であり、質の高い夜桜塗り、蒔絵、螺鈿など各種加飾技法の能力が、老朽化した祭車の復元的漆工修理に存分に生かされている。
略 歴 |
・昭和52年 | 東海伝統工芸展初入選(以後数回) |
・昭和62年 | 日本伝統漆芸展入選 |
・平成5〜7年 | 桑名市民展運営委員 |
・平成8年 | 淡交ビエンナーレ入選 |
・平成8年 | 茶道美術公募展入選(以後2回) |
・平成8・9年 | 桑名市民展審査員 |
・平成10年 | 淡交ビエンナーレ入選 |
・平成11・12年 | 桑名市民展運営委員 |
・平成12年 | 青漆イジ塗り、縁朱塗り技法による「桑名盆(かぶら盆)」が三重県指定伝統工芸品に指定 |
・平成16・17年 | 桑名市民展運営委員 |
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