(1)兜 鉢は三十二間大円山形、外法21cm、内法径17cm、深さ11.5cm、しころは板物で三下り革包、鏝頭形1枚吹返し紺糸素掛威で耳糸は啄木威である。 眉屁は幅7cm、長さ25cm、前立物は椀形円形で径11cm、木製で金箔をおき前面に「八幡官」と墨書す。 各段の革包の色は黒色の牛革を張っている。 尚裏面は黒漆塗である。 吹返は左右共長さ16.5cm、幅9cm、中央表面に金色金物の据文葵紋1個宛付す。 八幡座は口径内法2.4cm、高さ3cm、又鉢の裏面は受け張りで内部に「享保十一歳八月吉祥日、明珍式部紀宗察、於武江造之」と刻している。 (2)面 錆地総面で垂板物革包二下、紺糸素掛威、耳糸は啄木威しである。 (3)喉輪 本小札、二下、紺糸毛引威、菱縫紺糸、耳糸啄木威しである。 (4)胴 錆地五枚胴で鉄製である。 前胴に雨龍の打出しがある。 その右側縁に「享保十一年丙午八月吉祥日、甲冑良工唯一、於武江、増田明珍式部紀宗察造之」と刻銘してある。 胸板下部水引の止鋲の頂に「幕下累代之臣」とある。 胴背面は押付板中央左右に赤銅据文金物で真丸形の中に「忠」左に「義」右に「信」と浮彫りの文字が彫刻されており、これが附してある。 (5)草摺は板物革包七間五下り、紺糸素掛威である。 腰革付、耳糸は啄木威しである。 前面三間、側面各1間、後背2間、計7間となる。 打出し据金物に梅鉢紋2個ずつある。 (6)置袖 板物革包七下り紺糸素掛威し、析冠板及び化粧板がある。 耳糸啄木威しである。 尚菱板に葵紋、梅鉢紋各1個あり、杏葉、面頬皆葵、梅鉢紋を附す。 顎下に「享保十一年丙午歳二月吉祥日、甲冑良工唯一…・・宗察(花押)於武江」と刻銘す。 (7)佩楯 瓦札紺糸綴り四下り。 (8)臑当 鉄錆地にて中立挙、筒臑当に紋様打出しがある。 製作年代は江戸中期である。 松平定信所用であったと伝えられる。
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