「類聚名義抄」は、平安末期に成立した漢和字典で、漢字を偏と旁によって分類し、これに音や訓を註記したものである。 仏・法・僧の三巻からなり、百二十の部首分類体であるが、完本は観智院本(重文・天理図書館蔵)のみである。 名義抄には大別して「原撰本系」と「改撰本系」とがあり、この名義抄は改撰本系蓮成院本の系統に属する。 この系統の本では現存本最古で、蓮成院本の原撰本に近い姿をとどめている。 本文は押罫のある厚手の料紙に七行四段に墨書され
、江戸後期の伴信友写本類には見られない朱筆が多く付されている。 第二冊にはもとの外包紙と思われる紙が綴り込まれ「三宝類聚名義抄中一」「蓮成院」と墨書され、この本が奈良興福寺塔中蓮成院に伝来したものであることが知れる。 また、本書は本来粘葉綴であったものを、虫害がひどいため後世補修の際切り離し一葉ずつとし、糊代の部分を補足して糸綴装としたものである。
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