正重は、室町・戦国時代に活躍した刀匠・村正を祖とする刀匠です。「千子派」と呼ばれています。室町時代後期の千子派には、村正のほか、正重や正真らがいます。江戸時代には、村正が徳川家に祟るということから村正銘の作品は見られなくなり、千子派の系統ではこの正重が存続しています。
今回の指定は2口の太刀で、Aには「春日大明神」と「三崎大明神」の2社に対し、「貞昌」が奉納したことを示す彫があります。「貞昌」は姓が分からず、どのような人物かは分かりませんが、当時の桑名藩松平定重の家老に奥平貞澄という人物がおり、あるいはその一族かも知れません。Bは「春日大明神」の彫があり、Aから1ヶ月後に制作されたものです。
江戸時代の千子派の作品は極めて少なく、室町時代後期から続く桑名の千子派の工芸技術を示す正重の基準作例といえます。また、江戸時代の奉納刀として、文化史的にも価値が高いものです。
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