桑名市の十念寺が所蔵する涅槃図です。涅槃図は釈迦の生涯を描いた仏伝図の一種で、涅槃会の本尊像として多くの寺院で制作され、伝えられています。
本図は、涅槃に入って横たわる釈迦と、その周囲で悲嘆号泣する菩薩や仏弟子、王侯などの民衆と、多数の禽獣を描いています。釈迦の肉身は白色、着衣には蓮華唐草(れんげからくさ)や網目(あみめ)文といった文様が截金(きりかね)線で表され、周囲の人々も赤や緑といった諸色で色鮮やかに表現されています。涅槃図には様々な形式がありますが、その中でも釈迦が横たわる棺の向かって左側面を見せる形式で描かれており、先に制作された同じ形式の涅槃図の色々なモチーフを継承して描かれています。室町時代以前の作例として貴重な作例です。
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