石取祭は、各町内から出される祭車を鉦、太鼓で囃しながら曳き回す行事で、桑名市本町に鎮座(ちんざ)する桑名宗社(通称春日神社)で行われる。
春日神社にはもともと「比与利祭(ひよりまつり)」(現在は「前期桑名祭」と称する)と「御車祭(みくるままつり)」(現在は「後期桑名祭」と称する)という二つの大きな祭礼があった。石取祭は、比与利祭の一行事であった「石取」が祭礼化し、宝暦年間(1751〜1764)に独立して行われるようになった。我が国における一般的な山・鉾・屋台の行事は、神々を賑やかな行列で鎮め送ることを目的に成立したのに対し、石取祭は石を取って神に奉納する行事から展開したものであり、山・鉾・屋台の行事の変遷過程を知る上で重要な行事である。石取祭は渡御(とぎょ)を伴わない祭礼であり、祭りの発生や展開過程に特色がある。
祭礼1日目の土曜日は試楽(しんがく)と呼ばれ、深夜0時に鉦鼓(しょうこ)を打ち始める「叩き出し」が行われる。夜が明けると各町内は午前中に石を入れた献石俵(けんせきだわら)を春日神社拝殿前に奉納する。献石に使用する石は、7月第3日曜日前後に町屋川で川原祓式(かわらはらいしき)後に拾い、俵に詰める。夕方には祭車を曳き回す町練りが行われる。
2日目の日曜日は本楽(ほんがく)と呼ばれ、深夜2時から「二時の叩き出し」が行われる。午後には各町内の祭車が決められた整列位置に向かって移動する。整列する場所は一年ごとで異なり、北市場並びと南市場並びがある。北市場並びは八間通に、南市場並びは旧東海道沿いに整列する。祭車の整列は午後3時30分までに終える決まりとなっている。午後4時30分を過ぎると、整列場所から祭車の移動が始まり、午後6時過ぎには春日神社の楼門近くまで移動する。渡祭前に渡祭始式(とさいはじめしき)が行われ、午後6時30分から赤提灯を合図に渡祭順一番の祭車から順次渡祭を行う。渡祭後は決められた場所に祭車を停め、その後曳き別れを行った後、町内に戻って行く。
|